ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「ほ、本当に入ってよろしいのですか?」
「もちろん。連れてきておいて追い返すわけないだろう」
男性の部屋に入るなど、兄以外に経験ない。
しかも相手は一国の王子だ。こんなに気軽に入って良いのかと戸惑うも、掴まれた手は離してもらえそうもない。
「しっ、失礼いたします」
覚悟を決め、ぎこちない足取りで室内へと進み、……ロザンナは「まあ」と目を輝かせる。
アカデミーで彼が使用している部屋と同じように壁際に大きな書棚があり、たくさんの本が並んでいたからだ。
「以前から思っていましたが、アルベルト様は読書家でいらっしゃいますよね」
上着を脱いだアルベルトに話しかけながら、ロザンナは嬉々として書棚へ近づいていく。
彼が眠ている間、何か読ませてもらおう。専門書はもちろん小説も充実していて、これまであまり手を伸ばすことがなかったそちらにも目が向く。
「おすすめの物語を教えてくださいな」
タイトルを黙読しつつ、後ろにいるだろうアルベルトに声をかけた時、そっと肩に手が乗せられた。
「すまない。寝入るまで付き合ってくれ」