ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
振り返ると、すぐそこに眠そうな顔。わずかに首を傾げた瞬間、アルベルトに横抱きに体を持ち上げられ、ロザンナは「きゃっ」と小さく声をあげる。
「お、お、お、お待ちください、アルベルト様」
運ばれた先はベッドで、ロザンナの横にアルベルトも身を横たえる。ベッドを降りようとしても逞しい両腕に引き寄せられて逃げ出せない。
アルベルトから眠たげにすり寄られ、ロザンナは身動きができず顔を強張らせる。
抱き枕状態のまましばらくじっとしていると、やがてアルベルトから規則正しい寝息が聞こえてきた。
もう寝たのかと驚き、そっと顔を動かして彼の様子をうかがう。無防備な寝顔を見るのは二度目。躊躇いながらわずかに頬に触れて、ロザンナははにかむ。
「お疲れ様でした」
徐々に温もりの心地よさに誘われ、アルベルトの呼吸に合わせてロザンナのまぶたも重くなる。
ここ数日の疲れを癒し合うかのように身を寄せて、眠りに落ちていった。
結局その日は夕方まで眠り続け、目覚めたのもふたりほぼ同時だった。
気恥ずかしくて顔を赤らめながら用意された紅茶を飲んでいるうちにアカデミーへと帰る時間を迎え、おすすめしてもらった小説の一巻を借りて帰路についたのだった。