ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
アルベルトの部屋での時間は、幸せだった。
振り返るたび実感を深め、アカデミーでの残り少ない日々もきっとそんな日が続くだろうと思っていた……が、願い通りにはいかない。
翌日一般の授業を終えてから、ロザンナは一晩で読み終えてしまった小説を大切に抱え持ち、いつも通りアルベルトの執務室に向かうべく椅子から立ち上がる。
昨日の幸福感を胸に残したままそわそわとした足取りで教室を出ようとした瞬間、「ロザンナさん」と先ほどまで教鞭を奮っていたゴルドンに呼び止められた。
振り返ったロザンナへと、周囲を気にしながらゴルドンが話しかける。
「アルベルト様はしばらくアカデミーにお見えにならない」
「どうしてですか?」
「公務です。余裕がある時は授業に顔を出す予定のようですが、終わり次第城へ戻らないといけないため、放課後あの部屋に立ち寄る余裕がないとのことです」
「……そ、そうですか。わかりました」
最後の言葉でこれはアルベルトからの伝言なのだと気付かされ、ロザンナはゴルドンに頷きかける。寂しいけれど、受け入れるしかない。
廊下を歩いて行くルイーズの姿を見つけ、ロザンナは「それなら私は自室に戻ります。失礼します」とお辞儀をし、ゴルドンの元を離れた。