ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
すぐにルイーズに追いつき共に寮に戻ると、いつもは部屋で待っているトゥーリが入り口で待っていて、しかもその隣にはダンの姿があった。
「お兄様、お久しぶりですわね。……何かありましたの?」
ダンが私服ではなく騎士団の制服姿のため私用でやって来たとは思えず、ロザンナは周囲を見回しながら慎重に尋ねた。
それにダンはほんの数秒、トゥーリと視線を通わせてから、言いにくそうに口を開く。
「実は……、最近寮の近くで不審者の目撃情報がいくつか出ていて」
今度はロザンナとルイーズが顔を見合わせる番だった。
「本当ですか?」
マリノヴィエアカデミーはぐるりと壁に囲まれていて、出入口は門扉の一か所だけ。もちろん守衛も立っている。
安全だとすっかり思い込んでいたが、壁を乗り越えようと思えば侵入は可能だろう。
城でのあの一件を思い出し、ロザンナは身震いする。
あの男は捕らえられ牢に入れられているが、また似たような事が起こったらと不安で胸が苦しくなった。
「うちの寮はみんな出払っていて人が少ない状態だから、余計に狙われそうね」
「冷静に怖いことを言わないでください」