ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナが「メロディ先生」と切なく呟いた時、先ほどと同じように戸が叩かれた。トゥーリが申し訳なさそうに室内へ入ってくる。
「お時間のようです」
開けられた扉の向こうから賑やかな声が聞こえ、花嫁候補たちが大広間へ移動し始めていることに気づかされる。
メロディはそっとロザンナの手を離し、改めて頭を下げた。そして「失礼します」と囁いて、部屋を出て行った。
姿は見えなくなっても、トゥーリは閉まった扉を心配そうに見つめている。そんな彼女が紫色の布で覆われた何かを持っていて、ロザンナは眉根を寄せる。
「それは何?」
ぽつりと問われてトゥーリはハッとし、視線をロザンナへ戻した。
「ドアのそばに置いてありました。朝食の時刻にはなかったのですけど」
視線を通わせてから手を伸ばし、ロザンナは紫色の布を引っ張った。
現れたものを見て、息をのむ。トゥーリが持っていたのはディックの鉢植え。
しかも、鉢はアルベルトの執務室に置かれていたものと同じで、花弁は炎のごとく赤々と揺らめいていた。
送り主はアルベルト以外考えられない。
どんな意図があって贈られたのかはわからないが、震える手で花に触れるとアルベルトの温もりを感じたような気がして、ロザンナは泣きそうになるのを必死に堪えた。