ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています


「良かった」


もう大丈夫。死は回避できた。アルベルトも無事だ。

安堵から涙をこぼしたロザンナにアルベルトは慌てふためく。ロザンナは人目も憚らずに彼へ抱きついて、声を上げて泣き続けた。



金銭と引き換えにマリンを推したアカデミーの教師は職を追われた。

二年前にはエストリーナ夫妻、そして城の裏庭でロザンナを襲った男に、アカデミーの階段でロザンナを突き飛ばした男。

そのふたりを裏で動かしていたアーヴィング伯爵。

全てがアルベルトの宣言通り、牢に入れられた。

ふたりの男は罪を認めたが、王子の命を狙い重罪とみなされたアーヴィング伯爵はいつまでもその横柄な態度を崩さなかった。

そのため、カークランド国内で一番厳しい環境とされるタシュド牢獄へと三人まとめて送られることが決まった。

移動のために檻車に乗せられた時だった。

罪を認めたらタシュドに行かずに済んだのにとアーヴィング伯爵を責めていた手下の男がこれまでの不満を爆発させ、警護に当たっていた騎士団員から奪い取った剣でアーヴィング伯爵を貫いたのだ。

牢にいる間も命を引き取った後も、アーヴィング伯爵の元へ家族が訪ねてくることはなかった。

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