ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
父の傍らでただニコニコ笑っているのに疲れたロザンナは、「ケーキを頂いてくるわ」とその場から離脱する。
しかし、ケーキや焼き菓子などがたくさん並べられたテーブルへとひとり向かう途中で、それほど食べたくないと小さくため息をついて足を止めた。
室内を見回すと知っている顔がいくつかあるが、今から友達になっておきたいと思える面子ではない。
どうしようかなと思いを巡らせた時、開けられた大窓から風が吹き込み、花の甘い香りを運んできた。
途端、とある場所が頭に浮かび、ロザンナはちらりとスコットの様子を確認する。
そんなに場所も離れていないし、すぐ戻ってきたら問題ないだろうと考え、そのままこっそりと館を抜け出した。
別館に来る途中に通ったレンガ道まで小走りで戻ると、そこで見かけた脇道へと躊躇いながらも足を踏み入れた。
前回の人生で、のちに王立騎士団員となった兄のダンから、別館へ向かう道を逸れたところに、真っ赤に燃えているような花弁を持った花が見事に咲き乱れている神秘的な空間があると聞いたのだ。
勝手に歩き回るのは良くないことと分かっている。