ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナも気配につられて戸口に顔を向け「あら」と呟き、そこに立っている人物へと本を手にしたまま軽く膝を折ってお辞儀をする。
「アルベルト様、いらしていたんですね」
「あぁ。たまには様子を見ておかないとと思って。俺の嫁候補が世話になってるから」
「ただの候補者のひとりに、そんな気遣い不要ですわ」
面白い冗談だと笑うのはロザンナだけ。
アルベルトはにこりともせず冷めた目でリオネルを見つめ、リオネルは赤かった顔を青白くさせて、「アルベルト様がいらっしゃったと師匠に伝えてきますね」とぎこちない足取りで部屋を出て行った。
「……どうしたのかしら」
「いろいろ悟ったんだろう」
「何を?」
「わからないなら気にするな」
はぐらかされたことにロザンナが納得いかない顔をすると、やっとアルベルトにいつもの明朗さが戻ってくる。
ぱたりと閉じた本をテーブルに置いたロザンナへと歩み寄り、逆に問いかけた。
「それより、はしゃいでいたみたいだが、何か嬉しいことでも?」
「えぇ。しばらく来られなかったので、その間、回復薬を作りに励んでおりました。決められた濃度別に仕上げることになんとか成功したのですが、……低濃度にするのが難しくて、失敗作がこの三倍ほど。自室に隠しましたけど、トゥーリに気づかれないことを願うばかりですわ」
「そっか。じゃあ、それは俺が引き受けることにしよう。また近いうちにエストリーナ邸にお邪魔するよ」