愛は惜しみなく与う⑥
記憶の中ではあの時


1人、男がいた



それを思い出した




「へぇ…覚えてるんだな。嬉しいな。覚えてないと思ってた」



あたしはダンスパーティーが始まると共に、スッと会場を抜けて、バルコニーに繋がる大きなガラス窓のそばに行って…


それで…



バルコニーの近くで、つまらなそうに下を向いていた人が居た。


パッと目が合えば、顔色が悪い



それであたしは…




「誰一人俺の体調に気づかなかったのに、お前だけだよ、気づいたの」



顔はよく覚えてないけど
サトルとは似ても似つかなかった

でもあれはサトルやったん?



「あたしと同じで…退屈そうで、それで、顔色も悪かったから…話し…かけた」



普段なら誰とも話さない。極力存在を消してた。

ただあの時の事は覚えてる



あたしと同じような顔をした人が居たから…



「ほらな、お前と俺は似てるんだよ」


サトルがそういった瞬間、泉はあたしの手を引いて再びサトルと距離を取る
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