クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ……クッ! これも妻から与えられた試練と思えば……耐えてみせよ……ぅ、ううっ……。
 その時、悶絶する俺の脳裏に、アレルギーに悩み、父と共に高名な医師を訪ね歩いたかつての記憶が過ぎった。
 俺、ライアン・エルモンドは筆頭侯爵家のひとつ、エルモンド侯爵家待望の嫡子としてこの世に生を受けたのだが、生まれながらにして特異なアレルギー体質だった。
 そのアレルギーというのは、母以外の女性に触ると全身に発疹ができて痒みにもんどり打つという怪奇なもので、年々悪化の一途を辿った。そうして今では触れずとも半径一メートル以内に女性を捉えると、発疹ができるようになっていた。
 当時、父と訪ね歩いた医師らは、形ばかりの問診と診察の後、皆一様に眉間に皺を寄せ、首を横に振った。
『エルモンド侯爵。残念ながら、ご子息ライアン様のアレルギーを直す薬はございません』
『なんということだ……。女に触れんのでは、世継ぎが望めん。我がエルモンド侯爵家が、ライアンの代で途絶えてしまう』
 最後に訪ねた医師からの宣告に、父は額に手をあてて力なく肩を落とした。
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