クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 周囲にいた老婦人が慌てて駆け寄ってきて、支えてくれる。私は女性の腕の中で激しく全身を震わせていた。
 私はこのまま、ライアンを失ってしまうのではないか。そんな恐ろしい想像に押し潰されそうになり、止めどなく涙が溢れた。
「とにかく、我々も可能な限り消火にあたる! 屋敷の近くは火の子が飛んでくる。ここは我々に任せ、君は離れていなさい!」
 ……もしかして、バチがあたったのだろうか?
 私があなたを愛している。この事実だけでよかったのに、要らぬ猜疑心を抱いたから、神様は怒ってしまった? その戒めに、私からあなたを奪おうとしているの……?
 恐怖が心を蝕んでゆくのを感じたが、絶望的な状況にあって、それらを振り払う術がない。
「さぁ、こっちにいらっしゃい」
 私は女性に引き摺られるようにして運ばれた。その時、ふいに脳裏を屋敷から見下ろした居住区の光景が過ぎった。
 ……術がない? 馬鹿なことを! みすみす、愛しいライアンを奪われてなるものか!
 ならば、そのために私が出来ることは――!?
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