クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 本当はすぐにでもライアンの元に駆けていき、無事な姿が見たい。だけど私は、リレーの手を止めることはしなかった。大粒の涙を流しながら、水を渡し続けた。
「皆、騎士団が消火の応援に来てくださったぞ!」
 それから、どのくらい時間が経っただろう。通り沿いで水のリレーにあたっていた住人が声を張った。
 騎士団なら、専用のポンプと長距離のホースで川からの放水ができる。これで火は、きっと幾らもせずに鎮火するだろう。……あぁ、よかった!
「ここからは騎士団が消火を試みる! 近隣住民はリレーを中断し、離れてくれ!」
 騎士団員が慌ただしく行き交い、私たちに作業の中断を告げる。
 すぐにライアンのところに……! 私は火事場に向かうべく、抱えていた桶を下ろして踏み出しかけた。その時――。
「マリア!」
 呼び声に、えっ?と思って見上げるのと、伸びてきた逞しい腕にグッと抱き締められたのは同時だった。
 私をすっぽりと包み込むその人の外套は所々が焼け焦げて、煤っぽい匂いがした。
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