クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。
 颯爽と踵を返すレックスを憎々しく睨みつけると、俺は山と積まれた木板を、やすってやすって、やすりまくった。
 ところがだ、日がな一日やすり掛けをし、愛しいマリアにも会えぬまま今日という日を終えようとしていた俺に慶事があった。
 ……ん!? あれはマリアではないか!?
 夕食後のひと時、消沈して窓の外を眺めていると、視界に眩いばかりのマリアの姿が飛び込んで来た。
 彼女はブドウ畑の方向に進んでいるようだった。俺は嬉々として愛しい彼女を追って部屋を飛び出した。
「やぁマリア、奇遇だな」
 ブドウ畑でマリアの姿を見つけると、偶然を装って合流する。
「まぁ、ライアン! こんな時間に、珍しい場所でお会いしましたね。お散歩ですか?」
「ああ、ブドウ畑の方向から漂う芳香に誘われてな」
「たしかに、この島のブドウは香り高いですものね」
「……そうだな」
 頷いて答えながら、ブドウよりもっと芳しいマリアの香りをスゥっと鼻腔に吸い込んで、ひとり頬を緩ませた。
「ところで、君はなにをしている?」
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