クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
「虫取りです」
「こんな時間に虫取りをするのか?」
「ええ」
 ブルノージュ島のブドウ栽培は、極限まで農薬の使用量を抑えて行われている。そのため、摘粒直前で果実袋の掛かっていない今の時期が、もっとも苗に虫がつきやすいという。
「だが、そもそも君は今日はブドウの虫取りの当番ではなかったはずだよな?」
 専用のピンセットを使い、器用に虫を弾くマリアの横で、俺も彼女の見よう見真似で虫を弾きながら問いかけた。
 もっとも当番いかんに関わらず、今は夕食後の束の間の休憩時間で作業時間ですらないのだが。
「ええ。当番ではないのですが、この作業だけはどうしても私の手できちんとやっておきたくて」
「素人の俺が言えたことではないが、さすがに農薬の使用量が少なすぎるのではないか? 遠目に見た感じだが、ザッと十人を超える見習い修道女らが午前中、虫取りの作業にあたっていたはずだ。その作業後にこれだけの虫が残っているんだからな」
「いえ、問題は農薬の量ではないんです」
 俺の言葉に、何故か彼女は苦笑を浮かべた。
「どういうことだ?」
< 49 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop