クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ランタンの明かりを諦めて、手探りで柵を求める。しばらくすれば、また点くかもしれないと期待が捨てきれず、一応ランタンも捨て置かずに握り締めた。
 しかし視界が奪われた状況というのは、想像以上に不自由だった。伸ばした手を必死で周囲に巡らせるのだが、横殴りに打ち付ける雨粒を受けるばかりで、一向に柵に行きあたらない。
 ……どこっ!? 焦燥に駆られ、大きく一歩を踏み出した。その瞬間は、自分の身になにが起こっているのか、よくわからなかった。
 なぜか、踏み出した足の全面で地面が踏めなかった。
 え!? 私は咄嗟に、僅かに踏みしめる感触がある踵部分に重心をずらした。けれど、その部分がズルリと下に崩れ落ちる。
「きゃぁああああ――っっ!!」
 柵を捜し求めていたはずが、まさか、岸壁側に向かって進んでいたらしい。私は為す術なく、切り立つ絶壁から崩落した岸の一部と共に内海に向かって頭から落下していく。
「マリア――!!」
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