クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 入水する直前、遠くで名前が呼ばれたような気がした。けれど確認する間もなく、意識はあっという間に、体もろとも荒ぶる波に浚われた。

***

 ブドウ畑での作業を終え、帰り着いた納屋に身を滑らせる。
 ふぅ、かなり濡れたな……ん? 濡れた外套のフードを外し、残った果実袋を戻そうと収納棚に手を伸ばしかけ、ハッとして手を止めた。
 ……残りの果実袋がなくなっている! まさかマリアがこの風雨の中、ブドウ畑に向かったのか!?
 フードを被り直すのも忘れ、俺はマリアが向かったであろうブドウ畑へと取って返した。普通に考えれば、果実袋を持って畑に向かったのがマリアとは限らない。
 しかし俺は、本能的な部分で彼女だと確信していた。そもそも俺がブドウの保護に思い至ったのは、連日彼女とブドウの虫を払う中で、彼女がいかにブドウを手塩にかけて大切にしているかを知っていたからだ。
 ブドウを守るために畑に向かったのは彼女しかあり得ない――!
 なにもなければいいが……! ブドウ畑に取って返しながら、胸には言いようのない不安が渦を巻いていた。
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