クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 ブドウ畑の奥に向かって進む途中で、彼女のものと思しき足跡を見つけた。
 これは――! 足跡が続く先に目を凝らすも、彼女が持つ明かりらしいものは、全く見えなかった。降りしきる雨が視界を悪くしているからか……?
 若干怪訝に思いつつ、足跡の続く先に足を踏み出した。その時、風雨の音を裂くような悲鳴が響く。
 マリアかっ!?
 耳にするのと同時に、走り出していた。直後に上がった水音に、比喩でなく心臓が止まりそうになった。
 逸る思いで気持ちばっかりの柵を飛び越えて、岸壁に駆ける。
「マリア――!!」
 眼下に臨んだ水面に、それ自体が発光しているかのような鮮やかな金髪を認めた瞬間、俺は躊躇なく絶壁から海に飛び込んだ。
 っ! 波の間で浮き沈みを繰り返す眩い金を目指し、荒波を掻いて泳ぐ。やっと彼女に指先が届きそうになれば、波に距離を離される。幾度もこれを繰り返し、ついに彼女の腕を掴んだ。
 渾身の力で引き寄せて、彼女の顏が水面から出るように肩に担ぐ。彼女は失神してしまっているのか、意識が無かった。
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