クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
『君からマリアを取り上げるつもりなど毛頭ない。……すまなかった。妻が君に使者を立てようなど、思ってもみなかった』
『ルドルフ様に謝っていただく必要はありません。召使としてお仕えしていた時分、目を掛けて可愛がってくださった奥様を裏切り、あなたの愛を受け入れたのは、他ならぬ私です。どんな叱責も受け入れるつもりでいます。けれど、この子を渡すことだけは、絶対に出来ません』
『君のもとに二度と使いを寄越さぬよう、妻には私から言っておこう』
『お願いいたします。そうして、ルドルフ様も。……あなたも、ここに来るのはこれを最後にしてください。きっと、今更どの口がと思われるでしょう。けれど私は、これ以上奥様を苦しめたくないのです。この上はこの子とふたりで、静かに暮らします』
 父から私を隠すようにすっぽりと抱き締め直すと、母はくるりと背中を向けて、ひとり屋敷の玄関へと歩き出す。
『また、来る』
『……』
 父の言葉に、母は答えなかった。そうして無言のまま、逃げるように玄関に身を滑らせた。
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