クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 あまりに大きすぎる消失感に、止めどなく涙が溢れた。
「ない、とはどういう……。あぁ、もし衣服のことを言っているならば、体温低下を防ぐ為に俺が脱がせた。ただし、衣服を脱がせたことも、肌を合わせて体温を分け合ったことも、状況的にやむを得なかった。思うところはあるだろうが、どうか納得して欲しい」
 嗚咽する私に、ライアンは言葉を尽くす。
 もちろん、私だってちゃんと理解していた。ライアンがいなければ、私は生きていなかっただろう。
 命の恩人の彼には、感謝以外の感情なんてない。だけど理解とは別のところ、不安や悲しみがとぐろを巻いて私の心をのみ込んで、絶望へと引き摺り落とす。
「おい、マリア。なにをそのように泣いている? 泣いていてはわからん。どこか傷む箇所があるのか?」
 首を横に振ることで、なんとか答えた。
 ……本音を言えば、私自身迷っていた。胸の中、ライアンへの思いが苦しいくらいに膨らんで、一年後に迫る修道女への誓いに躊躇する心があった。
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