クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 だけどこんなふうに有無を言わさず、八歳から八年間描いてきた未来が断たれてしまうなんていうのは、想像もしていなかった。
「ならば、これからのことが不安か?」
 ……不安。まさにそう、拠り所としてきた修道女となる未来を失って、私は心細くて堪らないのだ。
 小さく頷けば、ライアンがどこか不器用な手つきで、私の頭を撫でて慰めようとしてくれる。
 苦しい中で見せられる彼の誠意にあふれる態度が、ますます涙をあふれさせた。だけど、泣いていても状況が変わらないことはわかっていた。
 私は瞼にグッと力を込めて、手の甲で乱暴に目元を拭う。彼はそんな私を労しげに見下ろながら口を開いた。
「それならば、なにも心配はいらん。俺はここの場所を正しく把握している。もう少し日が高くなったら、俺が君を修道院に連れて帰ってやる」
 ……修道院に、帰る? いいや。修道女になる資格を失った私はもう、今まで通りここでは暮らせない。
 一度は治めたはずの涙が、再び滲むのを感じた。
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