鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 それに、鬼畜も鬼畜で、無趣味で、特にこれといって夢中になれるものもなく、けれど、料理をしている時は、仕事のことや嫌なことでも忘れて集中できるから、いい気分転換になる、と言ってただけあって。

「ラタ、ラタトゥ……イユ……?」

「ええ。野菜とハーブをワインで煮込んだものです。二日酔いですし、こういうあっさりとした口当たりのいいものなら食べやすいかと思いまして。もし、辛い物が苦手じゃなければ、少し唐辛子を入れてみるのもいいですよ」

「……へぇ。凄く美味しそうっ! 家でも作れるもんなんですねぇ」

「ええ、意外と簡単ですよ。良かったらレシピをお教えしましょうか?」

「……あっ、いえ、結構です。私、料理はどうも苦手で……」

「……あぁ。もしかして、板前の侑磨さんがいらっしゃるから、比較されたり、アドバイスされたりして。苦手というよりは、作りづらいのではないですか? 僕も兄が居るので分かります」

「そっ、そうなんですッ! 兄なんて、私が作ったものは『味が濃すぎて舌が狂う』とかいって、文句ばっかり言うんですよ? 酷くないですか?」

「ハハハッ……それは確かに酷いですねぇ」

「でしょう?」

 料理のことをとっても楽しそうに話す鬼畜の、メタルフレームのインテリっぽいメガネをかけているというのに、なんだか子供っぽい無邪気な一面を垣間見てしまったり。

 それに加えて、お互い上に兄が居るということで、末っ子共通の不満というか、積年の想いというか、そういうモノも相まって。

 またまた私は、ついうっかりと、思いの外弾んでしまった鬼畜との会話に、花を咲かせそうになったりと、調子は狂わされっぱなしだ。
< 105 / 619 >

この作品をシェア

pagetop