鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 そうやって心の中で、酔いなんてもうすっかり醒めてしまっている筈なのに、ちょっとどうかしちゃってるとしか思えない自分自身に対して、言い訳のようなツッコみを繰り広げているところに。

「こんなふうに誰かのために料理を振舞ったことがなかったものですから、張り切ってしまってたようです」

 まるで、照れ隠しのように、自分のしたことをどこか他人事のようにボソボソと独り言ちるようにして呟いた、鬼畜のそんな声が聞こえてきて。

 途端に、もう、言い訳なんてできないくらいに、高鳴ってしまった私の胸がキュンッという切ない音をしっかりと響かせてしまっていた。

 でもそれは、私のために張り切って作ってくれたのかと思うと、正直悪い気なんてしないからであって、別にそれ以上の他意なんてない。

 私と同じように、きっと、鬼畜の言葉だって、別に大して特別の意味なんてなかったに違いない。それと同じだ。
 
 それでも、なんだか、胸の奥の方がむず痒いような、くすぐったいような、妙な感じがして。どうにも面映《おもは》ゆい。

 そんな私の視界には、相変わらず、私の視線から逃れるようにして、自分の分のラタトゥイユをスプーンで掬って頬張っている、ただそれだけなのに、なんとも優雅な鬼畜の姿が映し出されている。
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