鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
危うく、妙な感情を抱いてしまいそうになった自分自身に、何度も言い聞かせつつ、鬼畜のことを視界から強制退去させるため、私は手元の美味しそうな匂いと湯気を燻らせているラタトゥイユへと意識と視線とを集中させた。
……まぁ、そんな感じで。
昨夜のどこまでも意地の悪かった鬼畜とは違って、自然体で優しいどこか甘い雰囲気漂う鬼畜に、私は終始調子を狂わせられっぱなしだった。
そんな私がなんとか無事に遅めのブランチを、こんなに食べられないとか言ってたクセに、あまりの美味しさに、結局全部平らげてしまってて。
それを、もう、すっかり調子を取り戻した鬼畜に(と言っても鬼畜のことをよく知らないから何とも言えないけれど)、今日は機嫌がいいのか、特にからかわれるようなことも、小バカにされるようなこともなく、ただ心配そうに、
「そっ、そんなに食べて大丈夫ですか?」
偉く驚いた表情と言葉とをお見舞いされ、メチャクチャ恥ずかしい思いはしたものの、当たり前だが、それ以上特に何もなかった。
だから、相手があの鬼畜だというのに、色んなことに気をとられてしまってた私は、すっかり油断してしまっていたのだ。
食事が終わって、後片付けくらいはさせてほしいと鬼畜に申し出た私が、料理なんか苦手なクセに、なんとも広くて使い勝手が良さそうなシステムキッチンだなぁ、なんて思いつつ、食器をざっと洗って食洗機にセットし終えて、手を洗っていた時のことだ。
リビングのソファで腰を落ち着けて、食後のコーヒーを味わっていた筈の鬼畜によって、不意に後ろから抱きしめられてしまい、ビックリしてしまった私が、「キャッ!?」と、短い悲鳴を上げてしまったのは。