鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ……と、まぁ、苦し紛れに、つい今しがた鬼畜によって施錠の解かれた車の車体に掲げられている、誰もがご存じイタリアの高級車である馬のエンブレムを指さして見せるという行動に出るしかなかったのだけれど。

「へぇ、意外だな。車に興味がおありだったんですか? 奇遇ですね。僕も車が好きで色々乗り換えてきましたが。そうですか、侑李さんの好みでしたか。この車に乗っててよかったです。それにしても、跳ね馬が好きなんて侑李さんらしいですね? もしかして、親近感でも湧きましたか?」

「……へ!? 親近感?」

「はい。だって、このエンブレムに描かれているのが跳ね馬ですから、侑李さんにどことなく似てると思いましてね」

「……は、跳ね馬と……私が?」

「ええ。似てるでしょ? どことなく、”じゃじゃ馬”に」

「ーーじゃっ、じゃじゃ馬で悪かったわねッ!」

 誤魔化すために苦し紛れに放ったさっきの言葉も何もかも、鬼畜にはお見通しだったようで。

 どうやら私はからかわれていたらしい。

 からかわれていたことも確かに腹立たしかったし、見惚れてしまってたのを見透かされてしまったのも恥ずかしかったけれど。

 そんなことよりも、”じゃじゃ馬”に似ていると言われたことの方が何倍も何十倍も、ダメージは大きかった。

 なぜなら、小さい頃から、この気の強い性格のことを、耳にタコができるほど、家族や周りから、ことあるごとに、そう揶揄されてきたからだ。
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