鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
――何が『跳ね馬よりもじゃじゃ馬が好きですよ』よ? そんな心にもないことをよくもまぁ平然と。やっぱりかなりのプレイボーイに違いない。イヤイヤ、ちっとも褒めてないしッ! そんな言葉なんかに私は騙されないんだからッ!
心の中ではそうやっていつもの如く息巻いてるクセに、どういう訳か、言葉が出てこない。
さっきからドクドクと暴れはじめた心臓の音がやけに大きく感じられて、耳障りだし。なんだか胸が苦しい。何?どうしたっていうの?
別に、鬼畜がプレイボーイでもいいじゃない。私はただ『雇用主』である鬼畜の『雇用契約』により、"恋人のフリ"をしてるだけなんだから。鬼畜が他の女性にも、あーいう調子のいい思わせぶりなことを言ってたって私には関係ない。
なのに、どうしてこんなにも胸がズキズキして苦しくなっちゃうの? 意味が分かんない。ううん、何も考えたくもない。今考えたって、ろくなことにならない気がする。
そうやって考えるのを放棄した傍から、頭の中に、契約を交わしたあの日の夜から、もう何度振り払ってきたか分からない可笑しなモノが浮かび上がってきてしまい。私はフルフルと頭を大きく左右に振って、それらを必死になって頭の中から追い払った。
――違う、そんな訳がない。鬼畜のことをちょっと意識しちゃってるだけで、そんなこと絶対ないんだからッ!
私は可笑しなモノなど初めからなかったことにして、必死になって自分に言い聞かせた。