鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
「すっ、すみませんっ。今日は記念日に相応しく格好よく決めるつもりが……危うく我を忘れるところでした。体勢きつくなかったですか? 大丈夫ですか?」
「……え? あぁ、はい」
そこでようやく、我を取り戻したのだろう鬼畜のキスから解放された私は、そそくさと外されていたシートベルトを締めて、何でもない風を装って見せたのだけれど。
その所為で、鬼畜のことになど気を配るような余裕なんて持ち合わせていなかった私は、鬼畜の放った言葉の全てを聞き取ることなどできる訳もなく、最後に掛けられた身体を気遣う鬼畜の言葉に返事を返すことしかできずにいた。
ほどなくしてタワーマンションの駐車場から出た鬼畜の車は、お洒落な大人の雰囲気漂う街中を颯爽と駆け抜けて、鬼畜が時折服を買いに訪れるのだというこれまたお洒落で高級感漂う店へと訪れている。
鬼畜は手慣れた感じで店の責任者と思われる三十代くらいの綺麗な女性と一言二言言葉を交わしてから、店に飾られている綺麗な純白のクラシカルなワンピースの前で歩みを止めると、腰に手を回してエスコートしている私の耳元で、甘やかな声音で囁きかけてきて。
「これなんかどうですか? 色白の侑李さんにとてもお似合いだと思うのですが」
「……こんなの、汚してしまいそうで怖くて着れません」
「じゃぁ、これなんてどうですか?」
「……そうですね。これならデザインも色もシックで落ち着いてますね……て、これ、そんなにするんですか?」
「すみません。こちらとこちら、あとこちらの服も試着お願いできますか?」
「――えっ? そんなに?」
結局、気に入った服をそれとなく訊きだされてしまったけれど、普段私の利用する量販店とは桁違いの金額に驚きを隠せずにいた。