鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 鬼畜は、頭上に広がる突き抜けるような爽やかな青空を見上げつつ、私と同じように子供の頃を懐かしむようにして、きっと何気なく零しただろう呟きに、私の胸は不覚にも、キュッと締め付けられてしまった。

 ――だから、どうしてイチイチそういうこと言っちゃうかなぁ……。

 あんたにとっては、何気ない、取るに足らない一言だったのかもしれないけど、イチイチ真に受けちゃう人間だっているんだから。
 
 鬼畜に喰らってしまった言葉に、何かを返したところでろくなことにはならないどころか、ついうっかり可笑しなことを口走ってしまいそうで。何も返すことができずにいる私が、眼の前に広がる穏やかに凪いでいる海原に視線をやった刹那。

「侑李さん」

 隣を歩いていた鬼畜から不意に呼び止められ、隣の鬼畜の顔の方へ視線を向ければ、さっきまで穏やかな微笑を浮かべていた筈の鬼畜が、なにやら真剣な面持ちで私のことを見下ろしていて。

 その真っ直ぐに向けられた表情同様、鬼畜の真剣な眼差しに見つめられてしまった私は、囚われたように身じろぎも瞬きさえもできずに、ただただ鬼畜の瞳を見つめることしかできないでいた。
< 183 / 619 >

この作品をシェア

pagetop