鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
――あー、もー、ビックリさせないでよ……。
胸の内でホッと胸を撫で下ろしていた私は、「僕のことは気にせず、どうぞ」という鬼畜の声に促されるままに、「すみません」なんて返しつつ、バッグから取り出したスマホの液晶画面には、兄、侑磨の名前が表示されていて。
バカ兄貴の勘違いも甚だしい、あの”朝チュン発言”を思い出してしまった私は、一瞬、スルーしてやろうかという考えが頭にチラついたのだけれど。
遅かれ早かれ、鬼畜とはこういう関係になっていただろうし、今更兄を責めたところで状況が変わる訳じゃなし、今回のことは水に流してあげようじゃないか、なんて思いつつ、兄の通話に応じたのだった。が、しかし。
『あっ、侑李か? 俺だけど。たった今病院から連絡があって、父さんが、父さんがッ――プツッ、ツーツー』
耳に宛がったスマートフォンからは、いつになく慌てた様子の兄からの酷く緊迫した声音が飛び出してきて、嫌な予感が頭を過るよりも先に、肝心なことろで通話が途切れてしまった。
この前、病院に行った時には、経過も順調で、このままいけば退院も近いだろうと、穏やかな笑顔を浮かべながら、嬉しそうに話していた父の笑顔が脳裏に浮かんできて。
――そんなはずない。主治医の先生も、もう心配ない、そう言ってくれてたじゃない。