鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
そう思うのに、兄からの通話が途切れてしまってからも、掛け直すこともできずに、放心状態の私はただただ突っ立っていることしかできずにいた。
そんな私の異変にすぐに気付いたらしい鬼畜に、「侑李さん?」と、心配げな声音で優しく問いかけられた私の口からは、
「……ど、どうしよう。お父さんまで居なくなっちゃったら、お兄ちゃんとふたりっきりになっちゃう。そんなのヤダッ! ねえ? どうしたらいいの?」
そんな私らしくもない言葉が飛び出していて。
年末に突然母を失くしてからというもの、自分以上に気落ちしてしまってた父を元気づけようと、病気で入院してからは、心配をかけまいと、ずっと明るく振舞ってきたせいか。
今まで胸の奥底で抑え込んでいた筈の色んな感情が、あたかもダムが決壊したみたく、涙と一緒になって一気に溢れ出して止まらなくなってしまい。
「侑李さん、大丈夫ですよ。すぐに病院にお連れしますから」
暫くの間、そういって、なんとか私のことを落ち着けようと、優しい声をかけ続けてくれていた鬼畜の胸に抱き寄せられた私は、人目もはばからず、小さな子供みたいにわんわん泣きじゃくることしかできないでいたのだった。