鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
鬼畜の言葉にも耳を貸さずに頭を下げたままでいる父のことを眺めつつ、あれこれ考えを巡らせていた私の耳には、鬼畜に向けて、
「この通り、上が兄ということで、子供のころから侑李は気が強くて、強情なところがありますが、心根はとても優しい娘です。
親バカだと思われてしまうかもしれませんが、看板女将だった妻に似て、見てくれも悪くはないですし。それに、母方の祖父母が嫁に出しても恥ずかしくないようにと、とても厳しく躾けてくれたお陰で、行儀作法につきましても、どこに出しても恥ずかしくない、私にとっては自慢の娘です。
こちらはいつでも嫁に出す心づもりはできておりますので、どうか侑李のことをよろしくお願いいたします」
なんて、父が放った信じられない言葉の数々が飛び込んできたものだから。
――バカ兄貴、またしてもお前か?!
きっと、鬼畜と私がこのまま結婚ということになったら、一千万がチャラになるとか考えてんでしょうけど。世の中そんなに上手くいく訳ないでしょうが。この世間知らずのバカ兄貴が!
絶対に、バカ兄貴が父に余計なことまで喋ったに違いない。そう確信した私が、胸の内で怒りをぶつけつつ、隣に居るバカ兄貴を鋭い視線で睨みつけるも。
バカ兄貴はにこやかな笑顔で父と鬼畜のやり取りを見守っていて、私の視線になんてまるで気づいちゃいない。
このまま鬼畜と私が結婚したら万々歳だ、とでも思っているのだろう。
なんともおめでたすぎるバカ兄貴を睨みつけている私の耳には、今度は、父に応えるようにして鬼畜が放った、これまた信じがたい言葉が飛び込んでくるのだった。
「はい、勿論です。侑李さんが素敵な女性だということは重々存じ上げております。お父様、どうか頭をお上げください。こちらこそ、よろしくお願いいたします」