鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
けれどこれで、父や兄に、結婚、結婚と急かされることもないだろう。
そう安堵しつつも、それにしても、よくもまあそうやって次から次に嘘が出てくるものだなぁ、さすが鬼畜。
私が内心、そうやって感心しているところに、今度は、鬼畜の言葉にすっかり感動してしまってる様子の父の声が響き渡った。
「ええ、勿論です。そうさせていただきます。すみません、こういうことが初めてだったものですから、少し先走ってしまったようですね? ですが、そこまで侑李のことを大事に想ってもらえていると分かって安心しました。侑李のことをよろしくお願いいたします」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
ふたりに眼を向ければ、感極まった父は鬼畜に抱きつかんばかりの勢いで、鬼畜と握手したままの手を自分の方へ目一杯引き寄せている。
そんな父に応えるように、鬼畜もあのキラースマイルを浮かべて、父にされるがままになっている。
それを私と同じように眺めている兄が、父にもらい泣きして、目尻に滲んだ涙を指でそうっと拭い去っている姿が視界の隅に入ってきて。
なんとも微笑ましい光景だけれど、父や兄を騙しているという事実に、私の心情は複雑だった。
なにより、鬼畜が父に放ったなんとも調子の良すぎる言葉の数々が、嘘だと分かってはいても、勝手にときめいてしまっている自分自身に戸惑いしかなかった。