鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
「もう、何訳わかんないこと言ってんのよ? 二人きりじゃないんだから、我慢しなさいよッ」
「……じゃぁ、キスだけで我慢しますから、許してください」
「あっ、ちょっーーんんっ」
お陰で、隼の暴走を止めようとして、結局は隼に言いくるめられる代わりにキスで黙らせられてしまうのだけれど。そこへ。
「やれやれ、とんだバカップルだなぁ」
空気のように気配を消して静観していた蔵本の意地の悪い声が聞こえてきて。そこでやっと我を取り戻した隼に解放されることになって。
「あっ、いけない。また涼の存在を忘れてました。侑李さんの可愛い声を涼に聞かせてしまうことろでした。すみません」
「……済んだものはしょうがないでしょ? イチイチ謝んなくていいから」
「じゃぁ、帰ってから続きをしましょうね?」
「はいはい、分かったから、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
蔵本の存在は、恥ずかしいし気にはなるが、隼はいつもこんな感じというのもあって、随分と耐性が備わってきたように思う。
……というのも、蔵本から、今まで本気で女性を好きになったことがなかったらしい隼が、こんなふうに甘えたりする姿を見るのは私が初めてだ、と聞かされてしまった所為だ。
こういうのを、惚れた弱味っていうんだろうか。
それ以来、蔵本が居るからといって、無邪気に甘えてくる隼のことを邪険にできなくなってしまっている。
おそらくそのことに気づいているのだろう隼の、時折チラつかせるあざとさまでもが、どうしようもなく可愛く思えてしまっているという有様だった。
後ろ髪を引かれつつも、すずとの待ち合わせの時間が迫ってきたため、私は車を降りてカフェへと向かった。