鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 隼への罪悪感に苛まれてしまった私は、ちょうどすずから耳にした彼氏の話題に便乗して、隼のことを口にできたのだった。

「わっ、私も。実は、最近彼氏ができて、今日迎えに来てくれることになってるんだ」
「えっ!? なにそれ? せっかく結城君に会わせてあげたのに、無駄だったの? そういうことは速くいってくれなきゃ……てか、結城君、ごめん。期待持たせるようなことしちゃったね?」
「ううん、気にしないでよ? あの頃は高梨さんのことが好きで追っかけてたけど、今はただ懐かしくて、あの頃のノリで話してただけで、さすがにもうそういう気持ちはないよ。僕、大学までずっと九州だったせいで、こっちに知り合い少なくて、古い友人としてここに来てるだけだから」

 私の言葉に、寝耳に水状態だったすずが驚きながらも、結城君のことを気遣っている。

 それにより、結城君の本心を知ることができて。

 自意識過剰だったことを恥じつつも、私は心底ホッとしていた。

 私にとって、結城君はファーストキスの相手であり初恋の相手でもあった。

 それだけなら、こんなにも惑わされることはなかっただろうと思う。

 でも私の場合は、自分の気持ちに気づくのが結城君が引っ越した後だったから、不完全燃焼だった想いがしばらく燻ってた記憶がある。

 きっと、あの頃と変わらない結城君の言動に、あの頃の心情がぶり返したように錯覚し、戸惑ってたただけなんだと思う。

 加えて、隼と雰囲気やタイプがよく似ていたってことにも。

 けど、結城君に気持ちがないと分かれば、もうなにも気にする必要はない。ただの友人なのだからーー。
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