鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 やっと肩の力が抜けて、ウーロン茶の入ったグラスを煽っていた私の耳に、すずの残念そうな声が聞こえてきた。

「そっか? そうだよねぇ? もう、十年もたってるもんねぇ。でも、残念だなぁ。結城君は侑李にとって”幻の王子様”だったのにね?」
「すず、何だっけ? それ」
「何? その、”幻の王子様”って」
「え? ウソ、忘れてんの? ほら、夢によく出てくるって言ってた、王子様みたいな男子のことだよ。結城君に雰囲気が似てるって言ってたじゃんっ」

 すずが口にした”幻の王子様”という聞き慣れない単語に、グラスを手にしたまま首をひねる私同様に、疑問を放つ結城君。

 私の態度に、至極呆れたって表情を隠すことなく返してきたすずの言葉に。

 ーーあぁ、そういえば。

 いつからだったか、あの頃よく見ていた、王子様のような甘いマスクの男の子の出てくる夢のことを思い出して。

 その王子様のような男の子がニッコリ微笑む雰囲気が結城君に似てたんだっけ。

 それで、初めて結城君に会った時に、衝撃を受けたことも思い出すに至った。
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