鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
マンションを飛び出したはいいが、ジャケットのポケットにスマホは入っていたものの、バッグも持っていないため、財布もく、無一文だった。
けど、このまま家に帰るのは(バカ兄貴があれこれ言ってきそうだから)嫌だった私は、大人の雰囲気漂うお洒落な街並みを煌びやかな灯りに照らされつつ、行く当てなくとぼとぼと彷徨っていた。
しばらくして偶然通りかかった見覚えのある店の看板を目にして、確か、スマホ決済ができたというのを思い出し、足を踏み入れたのが、このこじゃれたバー『Charm』だった。
隼と蔵本に一度だけ連れられてきたことがあり、マンションからもそんなに遠くない立地にある。
迷惑なことに、ここのマスターであり、隼と蔵本の先輩でもある藤木裕次郎さんに、隼への不満をぐちぐちと零しながら美味しい(名前は忘れたが、この店のオリジナルだとかいう色鮮やかな)カクテルを煽っている。
言い訳のようだけど、最初から愚痴っていたわけじゃない。
さすがは客商売なだけあって、人当たりも良く、話し上手に聞き上手なうえ、見た目も良くて、三十代にしては落ち着いた雰囲気があり、イケオジを絵に描いたような藤木さんにかかれば、初めは口を固く閉ざしていた私もいつしか洗いざらいゲロッてしまっていたのだった。