鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

「……」

 隼は痛いところを突かれたというように、唇を真一文字に噤んだままでいる。膝の上に置かれた拳をギュッと握りしめるようにして。

 そこへ蔵本から再び畳み掛けるように言葉が放たれ、よほど言い難いことなのか、最後には助け舟を出してきた蔵本。

「何も言わなかったら誤解招くし、何も言ってもらえないことで、余計不安にだってなる。お前自身だってはっきり覚えてないんだから、尚更だろ? 言いにくければ俺から言ってやろうか?」 

 その言葉を聞き届けた隼は、なにやらバツ悪そうにチラリとルームミラー越しに蔵本のことを見やること数秒して、観念したように、

「いや、自分の口からちゃんと話す」

蔵本にそう応えて私の方に向き合ってきた隼が伏し目がちにポツリポツリと語り始めた。

「僕と彼女、昔から家同士で仕事上の付き合いがあったので、お互い子供の頃から知ってはいましたが、大学生になるまでは特に親しくもありませんでした。

それにあーいう利己的な女性はどうも苦手で、同じサークルでなかったら絶対に関わってなかったと思います。

その頃から、どうも好意を持たれてたようで、大学を卒業してからも何度か誘われたことはありましたが、その都度キッパリ断ってました。

セフレとはいえ、煩わしいことになるのが嫌だったので、社員や仕事上の付き合いがある女性は敢えて避けてきたくらいですので。

でもニ年ほど前、今回と同じように帰国した彼女から連絡があったんです。『失恋したから憂さ晴らしにお酒に付き合って欲しい』とーー」

 隼曰く、その日の夜、彼女に呼び出された隼は、昔からの家同士の繋がりもあるため無視もできず、それでも面倒ごとを避けるために蔵本を伴って、彼女の宿泊していたホテルのラウンジへと向かったらしい。
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