鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
同席させてほしいとは言ったものの、いよいよだと思うと、急に緊張感に見舞われ、胸の鼓動が嫌な音をたて始めた。
そんな私のことを少しでも落ち着かそうとしてか、いつしか隣の隼の手がぎゅっと私の手を包み込んでくれていて。
途端に緊張の糸が緩んでいくから本当にゲンキンなものだ。
私は大丈夫だから、と隼に少しでも伝えたくて、隼の手をぎゅっと両手で包み込んだ。
ちょうどそこへ、私と隼の様子にあからさまに気色ばんださやかさんの怪訝そうな声音が発せられた。
「思い違いって、どういうことかしら? 意味が分からないわ」
一方、円城寺社長は、かねてより当人同士で話をさせようと言っていたらしく、その言葉通り、眉一つ動かさず静観してくれている。
その様には、日本最古のデパートと言われる鳳凰堂の社長だけあって、中立な立場から双方の話を聞いて判断しようとしている姿勢が窺える。
とは言っても、親からすればどんな娘であろうと可愛いはずだ。油断はできない。
無意識に背筋を正した私の耳に、再び隼の揺るぎのないしっかりとした声音が流れ込んできた。
「こんな馬鹿げたことは早く終わらせたいので、単刀直入に言わせて頂きます。僕は、身に覚えのないことで責任をとるつもりはありません」
さっきよりも一段と低くて力強い口調で、キッパリと言い放った隼。
「はぁ!? なんですってッ! 子供まで作っておいて責任とらないつもりなの? 呆れた」
隼の揺るぎない声に、僅かに驚きの色を覗かせたさやかさんも負けじとキツイ口調を放ち、最後に捨て台詞まで寄越してきた。
「ええ、覚えがありませんから」
「覚えがなくても子供が居るのよ?」
「本当に僕の子供なんですか? 記憶をなくすくらい酩酊していたんですから、とてもそんな行為に及べるような状態だったとは思えないんですがねぇ」
「なら、DNA鑑定してみればいいわ」
「では、こちらでさせて頂きますので、さやかさんとお子さんの毛髪をご提出頂けますか?」
「こちらでするのが普通じゃなくて?」
しばらくの間、ふたりのやりとりは平行線を辿っていたけれど、とうとう隼が最後の一撃とばかりに強い口調で放った言葉が鳳凰堂の社長室に響き渡ったのだった。
「ハッキリ言わせて頂きます。僕はあなたのことを信用できませんので、以前お伝えしたとおり、法的手段をとらせて頂きます。ですので、今後一切、僕にも、婚約者にも、近づかないで頂きたい。もしもお聞き頂けないのであれば、この件は全てマスコミに公表させて頂きます」