鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
その間侑李は、泣き顔を隠すようにそっぽ向くと、黙り込んだまま手の甲で涙を拭おうとしていて。
「侑李」
僕はとっさに、微かに震え始めた侑李の身体を腕に包み込んでしまっていた。
「ヤダ。放してッ!」
「侑李、暴れたら危ないから落ち着いて。ね?」
侑李のことを抱きしめたはいいが、情けないことに、僕の口からは、そんな言葉しか出てはこなかった。
この時ほど、自分のことを情けない男だと思ったことはない。
それなのに……。
「……隼、ごめんね? こんな可愛げのない奥さんで」
侑李からは、思ってもみなかった言葉が放たれて、ヘタレ思考に支配されかけてた僕は、ハッとさせられたのだった。
ようやく本来の自分の役目を思い出した僕は、侑李の夫として、妻である侑李のため、そして自分のために。
打算でもなく、誠心誠意、侑李と真っ直ぐ向き合うために、心のままに言葉を紡ぎ出した。
「侑李は全然分かってないなぁ。侑李が怒ってようが泣いてようが、僕にとっては可愛い奧さんだよ。そんな侑李と夫婦になることができて、僕は世界一の幸せ者だって言い切れる。同じように侑李のことも世界一幸せにしたいって思ってる。だから、僕のために我慢しないで欲しいんだ」
そうしたら、僕の最後に放った言葉が引っかかってしまったようで。
「ちょっと待って。私、我慢なんてしてない」
侑李が待ったをかけてきた。
そりゃ、そうだろう。侑李にはそんな自覚はなかったに違いない。
本当に僕のために尽くそうとしてくれていたことは、侑李を見ていれば分かる。
でも、今の自分にはそれくらいのことしかできない。そういう諦めの気持ちだってあったはずだ。
確かに、今は無理かもしれない。
PTSDになってしまっただけじゃなく、妊娠している訳だし。
けど、まだ二十六歳になったばかりで若いんだから、このまま諦めたままでいてほしくない。
侑李には、本当にしたいことを頑張っていてほしい。
僕にその手助けができるのなら、なんだってしたいし、させてほしい。
「侑李にその自覚はなくても、僕は二十六歳になったばかりの侑李に我慢ばかりさせてる。無計画に妊娠させて、苦手な料理や家事までさせて、やりたいこと全部我慢させてばかりいる。そのせいでストレス溜めさせて情緒不安定にさせてる。謝るのは僕の方だよ。ごめん」
「隼のバカッ! そんなこと言ったら折角授かったこの子が可哀想でしょッ! 確かに、急に仕事辞めたから、社会に取り残されてるような気がすることもあったりするけど、こうして隼の奧さんとして料理や家事を頑張るのも楽しいし、とっても幸せなのッ! だからそんな風に『我慢させてる』なんて二度と言わないでッ!」
僕の想いが届いたのか、僕は侑李から、やっと本音を引き出すことに成功した。