鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

「どうしました? お客が僕では不服ですか? 侑李さん?」

 けれど、驚きすぎてなんの反応も返さない私の様子に、不安になってきたのか、途端に泣きそうな顔で不安げにそう問い返してきた隼に、

「……バカ。ビックリするでしょ」

 気の強いいつもの私らしい怒った口調で返したまでは良かったけれど。

 さっきまで不安で不安でしょうがなかったものだから、お客様が隼だと分かった途端、心底ホッとしてしまった私は、安心してしまって気が抜けてしまったせいか、気づけば一雫の涙を零してしまっていて。

 それに気づいたらしい隼が慌てふためいて、座り込んだままの私の傍まで飛んでくるなり、逞しい腕に包み込んでくれていた。

「吃驚させてごめん。大丈夫? どこか痛かったりしない? サプライズのつもりだったんだけど、可愛い奧さん泣かしちゃうなんて、僕、夫失格だね? 本当にごめんね?」

 あんまり心配そうに何度も何度も謝りつつ、身体のことを気遣ってくれる隼が、終いには、落ち込んでシュンとした泣きそうな声音を出すものだから、なんだか段々可笑しくなってきて。

「……隼ってば、慌てすぎ。ちょっとビックリしちゃっただけだから大丈夫」

 そこまで言うと、もう可笑しくて堪らなくなってきて、プッと吹き出してしまった私は、とうとう笑い出してしまうのだった。

 そうしてやっと私の笑いがおさまった頃には、今度は隼が拗ねてしまっていて。

「……そんなに笑わなくてもいいのに。侑李は男心が分かってないなぁ」
「もう。だからごめんって謝ってるでしょう?」
「……心がこもってない」
「じゃあ、今夜はお客様の隼のことを若女将としてしっかりおもてなしするから、それで許してくれる?」
「……いいよ。侑李がそこまでいうなら」

 ……という訳で、今夜は隼のことをお客様としてもてなすことと相成ったのだった。

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