鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
焦ってしまった私は、今まさに立ち上がって、こちらに背を向けて出て行こうとしている隼の足にしがみついて引き留めるという、若女将らしからぬ、なんともみっともない行動に出てしまっていた。
「……え? あの、どうしました?」
そればかりか、急に引き留められて戸惑いを隠せないでいる隼の放ったその声に被せるようにして、私は胸の内を洗いざらいぶちまけてしまっていたのだ。
「違うの隼。気乗りしないのでも、機嫌が悪いわけでもないの。隼がずっと敬語口調で話すから、意識しちゃって、うまく立ち回れなかっただけなの。折角、楽しみにしてくれてたのに、ちゃんとおもてなしもできなくて、ごめんなさい」
そうしたら、すぐに長身を屈めて私の目線に合わせてきた隼に、またまたあのキラースマイルを満面に綻ばせつつ。
「それって、侑李さんが僕にときめいてくれたってことですよね?」
なんとも嬉しそうに、問い返されてしまい。
自分の失言に気づき、今更ながらに恥ずかしくなってきた。
けれども、付き合う前の、私のことをあの手この手で振り向かせようとしていた、あの頃を彷彿とさせるような、久々の敬語口調とキラースマイルとの相乗効果により、胸をキュンと射貫かれてしまった私は、一瞬で陥落してしまっていて。
「////……うん」
やけに素直に答えた時には、もう既に、いつもの如く隼の逞しい腕によって包み込まれたあとで。そこへ。
「……侑李さん可愛すぎです。けど、どうしてくれるんですか? 僕のことこんなにしちゃって。こんな時に格好悪すぎですよ」
続け様に放たれた、どうやら男性特有の反応を示してしまったらしい隼の、困ったような少し拗ねたような、なんとも可愛らしい声音がまたもや私の胸をズッキューンと打ち抜いてしまうのだった。