鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 こんなに興奮してしまっている隼とお目にかかるのは初めてかもしれない。

 余裕なんてないだろうに、それでも身重の私のために、なんとか理性を失わないようにと必死になって踏ん張ってくれている隼に、益々愛おしさが込み上げる。

 私のことを大事そうに逞しい腕に包み込んで、なんとも甘やかで蕩けるような優しいキスの嵐を降らせ続ける隼の腕の中。

 私は隼の背中にぎゅうっとしがみついて隼の身体を尚も引き寄せ。

 今度は、隼の首の後ろに両腕を絡めて、自分から胸を隼の身体にピッタリと押しつけてしまっていた。

 どうやら興奮しきりの隼を目の当たりにした私は、すっかり感化されてしまっているらしい。

 今夜、若女将となった私にお酌してもらうという、夢を叶えることのできた隼と。

 板前にはなれなかったけれど、『橘』のために何かしたいと思っていた長年の夢が、まだ見習いとはいえ、若女将になったことでようやく叶えることができた私と。

 お互いにとって、今夜が特別な夜となったようにーー。

 私と隼にとって、今居るこの場所が、初めて出逢った原点とも言える、老舗料亭『橘』だという特別感がそうさせるのだろう。

 そう思うと、なんだか不思議な気持ちになってくる。

 そういえば、すずに言われて思いだした、昔に見た王子様のような男の子が出てくる夢もそうだし。

 それから、隼と私が初めて出逢ったその瞬間に、今は亡き母が居合わせていたということも。

 ……といっても、ずいぶん時間も経っているから、今の私には、王子様の夢のことも曖昧だし、隼と出逢った時の記憶も、残ってはいないから、なんとも言えないのだけれど。

 もしかしたら、あの王子様の夢は、隼と出逢った時の記憶だったんじゃないのかなぁ。

 もしかしたら、隼との再会は、天国のお母さんが引き合わせてくれたんじゃないのかぁ。

 おそらく、どちらもただの偶然なのだろうけれど、何故だか、そう思えてならない。

 隼との間には、そういう特別な、運命のようなものがあるんじゃないかと、私が思いたいだけなのかもしれない。

けれど、今夜が特別なものになったせいか、そう思えてならない。

なんてことを頭の片隅で思いつつ、隼との甘やかなキスに酔いしれていると、不意に隼の動きがピタリとやまった。

 余裕など一切感じられない隼は、それでもやっぱり身重の私の身体のことが気になってしまうらしく。

「……本当に、大丈夫なんですか? それに、他にもお客様がいらっしゃるのでしょう? 侑李さんの気持ちはとっても嬉しいですけど。例え侑李さんの声だけであったとしても、僕以外の人には聞かせたくありません。今ならまだやめられますのでもうこの辺で」

 今更やめるなんて無理なクセに、それでもそういって中断させようとしてきた。

 その隼の言葉には、身体のことだけじゃなく、独占欲まで孕んでいたものだから、またまたズッキューンと胸を撃ち抜かれてしまった私は、今一度、追撃を仕掛けるべく突っ走っていて。

「何言ってんのッ! 若女将の私がいいって言ってんだから、いいに決まってんでしょッ! お節介な兄貴のお陰で貸切状態だから、気兼ねなく、さっさと私のことを満たして。隼のせいでもう我慢なんてできないんだからッ!」
「ーーええッ!?」
「ね? 隼、お願い」
「////……ッ!?」

 盛大な啖呵を切ってみせた私の言葉にビックリ眼を大きく見開いている隼に向けて、最後の最後、トドメとばかりに、隼の胸にしなだれかかって放った渾身のお強請り攻撃によって、今度こそ私は隼を瞬殺したのだった。
 
< 555 / 619 >

この作品をシェア

pagetop