鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 ……あぁ、そうか。

 この鬼畜は、きっとあのホテルで自分の思い通りにならなかった私のことが許せなくて。とことん調べ上げて、兄まで手懐け、意のままにしてやろうと、この時を虎視眈々と狙っていたのだろう。

 どうやら私は、とんでもない鬼畜に目を付けられてしまったようだ。

 どんなに屈辱的だとしても、一千万なんて大金、逆立ちしたって出てこないんだから、この鬼畜に従うほかに方法なんてない。

 そうは思いながらも、悔しくて悔しくて、冷たい眼差しで私のことを見下ろしている鬼畜のことを、相も変わらず強い眼差しで睨みつけたまま、どうしても動けないでいる。

 そんな私に向けて、最後の追い打ちとばかりに、

「どうしても気乗りしないのであれば、時間の無駄ですので、どうぞお帰りください。その代わり、返済の方なるべく早めによろしくお願いします。侑李さんも、僕に貸しを作ったままではお嫌でしょうしねぇ」

そんなことできないと分かっていながら、わざとらしく、そんなことを言ってきた鬼畜に、言い表せないほどの怒りが込み上げてくる。

 それなのに、何を勘違いしてしまったのか、

「それとも、侑李さんほどお綺麗な方がまさかとは思いますが。こういう経験がないのであれば、僕が脱がせて差し上げましょうか?」

なんて、見当違いなことをほざいてきて。

 今の今まで冷ややかだった瞳に、怪しい光を宿した鬼畜の、期待に満ちたような嬉々とした表情を垣間見せられて。

 ーーこれはチャンスかもしれない。

 鬼畜が、処女を自分の思い通りに染め上げたいとかいう変態だったら、逃げおおせるかもしれない。

 付き合った経験は一度しかなかったけど、幸い処女でもないし。

 それに大学の頃に告白されて付き合った彼には、『不感症なんじゃねーの?』と言われて、それがもとでフラれちゃったくらいだし。

 ーーなんとかなるかもしれない。
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