鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 さすがに、身勝手な男だって思ったし。

 女のこと馬鹿にして、本当に最低な男だ。

 甘いマスクにスッカリ騙されていたけど、鬼畜そのものだ。

 そうも思ったけれど、よくよく思い返してみれば……。

 王子は始めに、ちゃんと私に念を押していたことを思い出し、王子がチラリと覗かせた悲しげな表情と、思わず漏らしてしまったであろう、あの言葉までもが同時に蘇ってきた。

『ただ、僕には、さっきあなたが言ってたような性癖がありまして。そういうものでないと、そういう気持ちになれない上に、おかしな噂まであるなんて、こんな男を好きになってくれる女性なんて居ないだろうなぁ……』

 ーーそうだった。

 確かに、王子はあの時、自分の性癖のことで悩んでいるようだった。

 王子は、自分の性癖のことで、ずっと苦しんでいたに違いない。

 だからこそ、何度も確認していたし、『セフレとして』ちゃんと線引きをしたんだ。

 おそらく、特定の彼女を作らなかった大学の頃から、今までずっとそうしてきたんだろう。

 それは、性癖のことを受け入れてもらえなかった時に、自分が傷つかないようにするための予防線でもあったに違いない。

 ーーだったら、少しは望みがあるんじゃないだろうか。

 幸い、私の性癖は王子の性癖と合致している。

 今は、傷つくのを恐れて深く関わらないようにしているだけで、一緒に過ごしていくうち、情だってわくだろうから、いつか心が通い合う日が訪れるんじゃないだろうか。

 性癖の相性がいいんだから、絶対来るでしょ。

 私は別に特殊とは思ってなかったけど、ちょっと特殊なようだし、早々そんな相手だって現れないだろうし。

 だとしたら、高確率で、王子の彼女の座を射止めることができるんじゃないのかな?

 ーーううん、絶対できるでしょ。

 たった一夜、王子と一緒に過ごしたってだけで、王子のことを理解したつもりになってしまった私は、自分の浅はかな考えに気づけるような冷静さなんて持ち合わせちゃいなかったのだ。

 キャリアだったこともあって、なまじ、仕事ができるからって、少々思い上がっていたんだろうと思う。
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