鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
あの後、慌てて飛び起きた私は、あたかも何もなかったかのように、驚いて口元を押さえ固まったままでいた結城君に、
「結城君、色々ありがとう。じゃっ」
そう言って、保健室の先生に「お世話になりました」と言い残すと、保健室から飛び出すようにして教室までダッシュで戻ったのだった。
その後は、四時間目の国語の授業中ボーっと心ここにあらず状態でなんとかやり過ごし、お昼休みである今に至るのだが……。
机の上にお弁当箱を出してみたものの食べる気にもなれず、机に突っ伏してうだうだしてしまっている真っ最中だった。
それを心配したすずが、私の様子をあれやこれや窺ってくれているのだけれど、事が事なだけに、すずに話すか話すまいか躊躇っているところだ。
「もう、嫌だ。今すぐ帰りたい」
「なになに? どうしちゃったのよ? 侑李ってば、なかなか帰ってこないと思ったら、人とぶつかって頭打って保健室で寝てたっていうし。保健室から帰ってきてからは、口を開けばそればっかり。一体何があったのよ?」
「……言いたくない」
「それも何度も聞いた。まぁ、言いたくないなら無理には訊かないけどさ、さっさとお弁当食べないと昼休み終わっちゃうよ?」
「……なんか、欲しくない」
――だって、何度洗ったり拭ったりしても、まだ感触が残っている気がして、嫌なんだもん。
それに、感触だけじゃなくて、結城君の顔のドアップまで浮かんできちゃうし。もう最悪だ。
「ええっ!? どうしちゃったのよ? お弁当を食べた後のお昼寝が生きがいだったあの侑李が、『欲しくない』って。ちょっと侑李、あんた大丈夫なの?」
――確かに、そうだったかもしれないけど、なんか酷くない?
私がこんなにダメージを喰らってるというのに……。知らないとはいえ、いい気なもんだ。