鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
結城君の明るい大きな声が私の耳に飛び込んできた瞬間、ついさっきまで私の存在になんて無関心だった筈の辺りに居た女子たちの視線が一斉に私に集まってきた。
そしてそれらの視線には、明らかに悪意のようなものが込められているような雰囲気が、結城君の声がしたと同時に急にお喋りを中断して、結城君の動向を静かに窺っているらしい周辺の女子たちから、ひしひしと伝わってくる。
不躾にグサグサと棘のように鋭い視線が至るところから放たれているようで、居たたまれない気持ちになってくる。
すずに聞くところによると、学校一人気があるらしい結城君のファンの間には、暗黙のルールというものがあるらしく。
それは、まだ誰とも付き合ったことのないらしいピュアな結城君に対して、抜け駆けは一切禁止、もしそういう相手ができたらそっと見守って応援する、というものらしい。
表向きにはそうなっているらしいのだが、今まで結城君が興味を持って何かのアクションを起こした女子に対して、陰では、結城君ファンである女子からの猛烈なバッシングが待ち受けているらしいというのだ。
そのため、結城君には今まで一度も彼女ができたことがなかったらしい。
……と言っても、あくまで噂だから真意のほどは分からないらしいんだけれど。
そういう噂を聞いてしまった後だから、そんな人気者の結城君と関わり合いになるのは御免だ、そう思っていたのに……。
ーーまさか、結城君が私のことをわざわざ待っているなんて、驚きだ。一体なんの用があるというんだろうか?
下駄箱の近くに居る私たちとは五メートルほど離れた距離に居た結城君が、まるで大好きなご主人様を見つけたワンコが一心不乱にしっぽを振り振りするようにして駆け寄ってきた。
そして私の眼の前に現れた結城君は、キラキラと眩い光を放ちながらニッコリとした人懐っこい笑顔を浮かべると、
「良かった~。まだ帰ってなくて。高梨さん、一緒に帰ろうッ!」
明るい無邪気な声でそう言ってくるや否や、私が持っていた通学用のスクールバッグをさも当然のように私から奪い取るようにして両手に抱えてしまった結城君の言動に、度肝を抜かれてしまった私は、しばし茫然としてしまっていたのだった。