鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
呆然自失状態に陥ってしまった私の視界の中で、結城君は僅かに首を傾げて不思議そうにキョトンとした表情を浮かべている。
ーーなんなんだろう? 男子のクセに、この可愛らしい仕草は。
自分の置かれた状況も忘れて、結城君の可愛さに惑わされ、そんなことをぼんやりと思ってしまっていた私の腕を誰かがツンツンと制服の袖を掴んで引っ張るような気配がして。そこでハッと現実世界に引き戻されることになった。
視線を向けた先にはすずが居て。どうやら袖を掴んでいたのは、近くに居たすずだったようだ。
――危ない危ない。危うく結城君の可愛さに流されてしまうところだった。
すずのお陰で、私はようやくいつもの調子を取り戻すことができた。
結城君が私に関わってくる理由なんて一つしか思い当たらないし、そんなことイチイチ気にされても困る。もとはと言えば、前方不注意だった私が悪かったんだし。
だから、眼前で小首を傾げてキョトンとしている結城君に、早々にお引き取り願おうと思ったのに……。
「私にぶつかったこと気にしてくれてるんだったら、もう気にしなくていいから。あれは元々私が悪かったんだし。てことで、すずと帰るから、そこ、どいてくれないかな?」
「そういう訳にはいかないよ。部活の顧問にも、女子にぶつかってケガさせたんなら、責任もって家まで送れって言われてるから、送っていかないと僕、怒られちゃうし。高梨さんのお友達の、宮内さん? とも仲良くなりたいし。あっ、でも邪魔はしないから、だから僕に送らせてよ?」
「はぁ!? 何勝手なことを。そんなこと誰も頼んでないしッ! 迷惑なんだけど」
「もう、つれないなぁ? 僕にあんなことしーーんんっ、ぐ、苦しぃ」
「分かったから。それ以上言ったら息の根とめるわよ?」
「やったぁ!」
「なんか結城君て、私の持ってたイメージと違って、ワンコ系だったんだぁ。可愛い。それに、侑李のこと黙らせちゃうなんて、結城君結構押し強いんだ」
「すず、あんた関心してないで、何とか言ってやってよ?」
「ええ~、ヤダよ~。結城君イジメたらあとで何されるか分かんないし。それに、侑李のこと心配してくれてるんだし。もっと優しくしてあげなよ? 照れてるのは分かるけど」
「ええ!? そ~なの?」
「ちょっと、すず、余計なこと言わないでよ? あんたも、すずの冗談真に受けなくていいからッ」
なよっとした外見とは違って、意外にも押しの強い結城君のペースに圧されてしまった私は、すずと、オマケの結城君と一緒に下校することになってしまったのだった。
この日を境に、平穏だった私の高校生活がガラッと様変わりすることになる。