鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 すずが居なくなってしまってしばらくの間。
 私は、ただただ無言でひたすらお弁当を食べることだけに集中していた。

 一方の結城君は、顔が綺麗に整っている所為か、私なんかよりも女の子らしい可愛らしい顔をしているクセに。やっぱりそこは男子、お弁当を平らげてしまうスピードはメチャクチャ速かった。

 まぁ、といっても、今日の私に関していえば、結城君とふたりきりなのが気まずくて。少しでも話すような時間を作りたくなくて、チビチビといつもよりゆっくりなペースで食べているからなんだけれど……。

 そんな無駄な抵抗をしていたところで、当たり前だが、お弁当を食べていればいつかは、なくなってしまう訳で。

 とうとう残るは、兄の作ってくれた私の大好物であるだし巻き玉子のみとなってしまい。

 泣く泣く、それでもゆっくりと咀嚼して、少しでも時間を稼いではみても、さほど時間なんて稼ぐことなんてできなかった。

 ふうと、人知れず溜息を零しつつ、結城君の方は極力見ないようにお弁当箱をトートバックに仕舞い込んで、いつものようにさり気なく、

「あー、食べたら、眠くなってきちゃったぁ」

なんていいつつ、両手を思いっきり伸ばして伸びをした時。

 いつものようにサッカーの雑誌をパラパラと捲っていた結城君が、私の声にハッとしたような表情をして、バッと顔を上げたと同時、私の方に視線を寄こしてきて。

「あっ、高梨さんっ。寝ちゃう前に、ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな?」

 いつもは、すずと一緒になって騒ぎながら、私のことを『可愛い』とか、色々言ってるクセして、いつになく思い詰めたような表情でそんなことを言ってくるものだから。

 私は、『進展、あるといいね?』なんて言ってた、すずの言葉を思い出してしまって……。

 驚きと動揺のあまり、後ろのフェンスにガシャンと頭をぶつけてしまったのだった。

「いった~ッ!?」

 なんて、声と同時にぶつけた頭を抱え込むという、絵に描いたようなドジっぷりだった。

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