鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
それに、大袈裟な声を出してしまったものの、それはこの状況に動揺してしまっていたからであって、大して痛くもなかったんだけど。
結城君は、私の声を聞いた途端に、さすがはサッカー部、素早い身の動きで瞬時に私の眼前に現れたかと思えば。
私が、眼前に現れた結城君とのあまりに近い距離にあわあわしている間にも、結城君は私の後頭部に手を当てて、そのまま自分の方に抱き寄せるようにして引き寄せていて。
まるで、結城君に抱きしめられているような体勢になってしまっている。勿論、身体は離れてはいるんだけれど。
私の眼前には、結城君の思いのほか広い胸が迫っていて。吐息がかかってしまいそうで、息をするのも憚れる。
だって、体温が感じられるくらいの至近距離なんだもん。
どうやら、私の後頭部の様子を見てくれているようなのだけれど。私は、もう大パニックだ。
顔は真っ赤だし。いやいや、顔だけじゃなく、もう全身真っ赤に違いない。
そこに、
「大丈夫? 前にも頭ぶつけちゃってるんだから、気を付けてね?」
なんて、いつもの無邪気な笑顔を満面に綻ばた結城君に、心配した声音で言われても。
真っ赤になってあわあわしている状態では、何も返せやしなかった。
そこで初めて、いつもの私らしくない有り様の私の異変に気づいたらしい結城君は、何故か困ったような表情になってしまってて。
「もう、自惚れちゃってもいいよね? そんな顔されちゃったら、僕、我慢なんかできないよ」
なにやらちょっと苦しそうな声音を響かせた結城君が、近い距離を尚も徐々に詰めて迫ってきたと思った時には、耳元で、
「好きだよ」
そう囁いてきた結城君の柔らかな唇によって、私の唇は塞がれてしまった後だった。