【完】スキャンダル・ヒロイン

坂上さんの言葉にこくりと頷く。
今日くらいは私も素直になって、姫岡さんの言葉に笑顔で頷いてあげよう。

きっと彼は言う。いつものふざけた感じで、おどけた顔を見せて’それ見ろ。俺ってすごいだろう?’って

それに’うん。すごいよ’って言ってやろう。 きっとあいつの事だから変な顔をして、頭でも打ったか?とまた可愛くない事を言うに違いない。

それでも姫岡さんをすごいと感じたのは事実なのだから。


シーンを撮り終えて監督やスタッフと話した後、姫岡さんはいつもの表情に戻って私と坂上さんを見つけると得意な顔をしてこちらへ駆け寄ってくる。

走り出したその姿を前に、大きな機材がよろけて倒れ掛かりそうになる。

「危ないッ!」

その言葉より先に走り出していた。
幽霊騒動の時と同じように真っ直ぐに姫岡さんに飛びついた。

ガシャーンと大きな音が耳に響き渡り、一瞬気が失うと思う程頭は真っ白になっていった。
そして直ぐに背中に鈍い痛みが走る。

さっきの衝撃音よりもっと大きく――姫岡さんの掠れた声が鼓膜をびりびりと揺らした。

「おい!お前!」

その後直ぐにスタッフさんが慌ただしく動き回る気配がして

「小道具ちゃんと確認しておけって言っただろ!」

「すいません!」

「何やっているんだ!」

罵声が現場に響き渡る。
顔を上げたら驚いて目を見開いた姫岡さんの茶色の吊り上がった瞳。
良かった。怪我はないようだ。
< 103 / 347 >

この作品をシェア

pagetop