【完】スキャンダル・ヒロイン

「大丈夫?!姫岡さん怪我はない?!
って、痛ぇええええ!!!」

体を起こそうとすると、背中にびりびりと痛みが走る。

「馬鹿野郎!何やってんだ!」

怒鳴り声が目の前で響き渡って、目の前の姫岡さんは苦しそうに顔を歪ませた。

そして直ぐに体が宙に浮く感じがした。ふわりと姫岡さんの香水の匂いが鼻いっぱいに広がって行く。

細いのに鍛えられてごつごつとした腕の中、抱えられて思わず体がびくりと飛び上がる感覚に陥った。

「ちょっと!降ろしてよッ!何してんの!」

「お前は馬鹿かッ!何を…俺を庇って……
大人しくしてろ!坂上さん直ぐに病院に連れて行く。その前に医務室!」

そう言って私を軽々と抱えて歩き出してしまった。

本当に何を庇ってんのって感じだけど。目の前にこちらへ駆け寄って来る姫岡さんの姿があった。そこに機材が上から落ちてきそうになった。

危ないと思ったのと同時に体が先に走り出していった。自分でも不思議なんだけど。

ただ……あなたはグリュッグエンターテイメントの所属タレント。しかも超人気俳優。そして私は一応バイトではあるが、その会社に雇われた身。

今日だって何もしてないけれど、名目は坂上さんのお手伝いだった。そこに仕事上の給料が発生するのであれば、事務所の所属タレントを守るのは、当然だろう。

’姫岡真央’に傷のひとつも負わせられない。だからこれが正しい選択だったと思う。けれど、私を抱える姫岡さんは怒ったようなそして苦しそうな表情をしたんだ――。
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